「勉強」を教えるのではなく「勉強方法」を教える。

映像授業というものが学習塾業界で取り上げられて、もう幾年かになる。
曰く、良い先生の授業をどこでも受けられる、戻り・先取り学習が出来る、安価である。
質の高い教育への関心が高まっている事や、インターネットの利用環境が劇的に向上する中で、様々な学習塾で映像授業の導入が行われている。
ただし、使い方や、映像授業の内容は、各塾によって取り組みは様々で、まだまだ試行錯誤という印象である。
そんな中、映像授業の制作・活用に10年以上前から取り組んでいる、業界で評判の塾「ワン・ツー・ワン個別学院」に話を聞いてみる事になった。
映像授業の特徴や、映像授業に対するこだわりを聞くつもりで教室を訪れた。
しかし、教室で聞く事が出来た内容は、映像授業という枠でくくれるものではなく、映像授業の先にあるものだった。

教室に入ると、映像授業用と思われるPCが沢山並んでいた。
しかし、机や椅子等は見なれた木とパイプの、いわゆる学校机である。
映像授業のパイオニアと聞いていたので、近未来的な装いを想像していたのだが、いきなり予想が外れた。

塾長であり、ワン・ツー・ワンの学習システムの生みの親でもある太田照子学院長に話を伺った。

ワン・ツー・ワンの映像授業に対するこだわり

学習塾創業30年を超える太田学院長は、驚く事に15年前から映像授業の制作に着手していたという。
まだ個別指導塾という言葉も少なく、映像教材の利用など殆どの塾にとって未知だった頃の話である。
12年前には、すでに5教科全ての映像教材(中学生)がそろっていた。
ワン・ツー・ワンは映像授業のメリットをどのように考えているのだろうか。

太田学院長:
戻り学習や、先取り学習(飛び級)がしやすいと言う事が一番のポイントです。生徒によって学習状況には差があるのですが、一度に入室する講師は1~2人しかいませんから、生徒自身が自分で自分に不足する事を学べる環境を作りたいというのがきっかけでした。
結果としてそれが、標準的で解りやすい指導を全員に徹底する事に繋がりました。

戻り学習、先取り学習

映像授業というのは、質の高い講師の授業を、場所時間を問わず見る事が出来る事がメリットである。
そういった、一般的な考え方はワン・ツー・ワンの根本的なコンセプトとは異なると言う。
何故そうなるのかという質問には、率直な回答が返ってきた。

太田学院長:
それは、塾で提供している事を映像にしてしまうという考え方です。当学院は違います。
も、もし可能であるならば、個別指導でも授業は生の先生の方が良いですから、それでは映像授業としての価値はあまりありません。
録画した私の授業を受講するより、私の授業を直接受講した方が生徒にとっては良いじゃないですか。

まるで映像授業の価値を否定する言葉のように聞こえる。
では、ワン・ツー・ワンは、何故映像授業を作ったのか。
それは太田学院長自身が、直接生徒に指導を行っている時に感じたジレンマがきっかけだったと言う。

一人ずつの生徒のために

太田学院長:
個別指導では、100%の内容をフルタイムで、一人ひとりの生徒さんに授業が出来ません。
また、授業料との兼ね合いで、最低必要な塾での授業時間(中学生の場合:週5~8時間)全てに、生徒さん一人に講師一人を配置出来ないのが現状です。
また、集団授業では、同じ授業を聞いていても、生徒の理解度というのは一人ひとりで差があります。
いくら学力別にクラス分けをしたとしても、生徒が2人以上いれば、その中でやはり一人ひとりに差があるのです。
そう言う生徒一人ひとりに指導しなければいけない内容と言うのは、それこそ十人十色です。
繰り返し問題を解くこととか、前の単元に戻っての復習とか、説明を聞いても分からない所をもう一度学習するとか、一人ずつ必要としている事が違うんです。
その中で、映像授業を活用する事で、私が生徒の前で授業をする時間を、一人ずつの生徒のためにもっと時間をかける事が出来ます。
映像授業がある事で、私は塾講師として、他のもっと大切な事を教えたり指導出来るようになりました。

つまり、ワン・ツー・ワンでは、生徒に対して授業をするという事は、塾としての役割のごく一部であると捕えられているのだ。
通常の塾であるような、教卓に立った講師が授業をするという内容は、指導上の一つのプロセスに過ぎない。
ワン・ツー・ワンでは、それから先のプロセスを講師が担うために、教卓に立っての授業をする代わりに映像授業があるという考え方だ。

無論、映像授業そのものにこだわりが無いわけではない。

太田学院長

太田学院長:
カジュアルである事は意識して作っています。
生徒が退屈しないよう、遊び心があるという事ですね。
時々、他の教科の先生が登場する等のサプライズもあって、飽きさせない作りになっています。特徴としてはスピードアップ再生(音を聞きとれる程度の早送り)も導入しました。
理解できている内容を他の生徒達と一緒に受講する「お付き合い授業」にならないよう、生徒自身の判断で早送り出来ます。
その事で、生徒の勉強の効率は非常に良くなりました。
こういった内容は、制作して生徒の反応をみると言う繰り返しの中で培ったものです。

さらに映像授業を見るタイミングについてもこだわりがある。

太田学院長:
ワン・ツー・ワンでは、「授業予定表」というものがあり、それに沿って授業を進めます。 映像授業の何番を見て、次にどのプリントを解いて、出来たら次に進んで、という内容が全てマニュアル化されています。 勿論、途中でつまずいた時は講師が指導しますが、基本的にはマニュアル通りに学習すれば習得できるようになっています。 そのマニュアルでは、最低同じ単元を4回繰り返す仕組みになっているので、忘れたころにもう一度その単元の学習をする事も出来ます。

この『授業予定表』には、進んだ所まで講師が確認して印を押すようになっている。
映像授業というデジタルな事を進めながら、その管理についてはずいぶんアナログである。
それについても理由があった。

太田学院長:
一つには生徒がPCの前にずっと座っていると、集中力に限界が来ると言う事です。
確認のために講師の所に行って印をアドバイスをもらうだけでも、「立って」「歩いて」「話しかける」と言う「動作」が必要です。
映像授業を受講するだけではなくて、時々体も動かす事で、長時間勉強するための気分転換になります。
それにいくらデジタル化を進めても、講師までデジタル化は出来ないので、印を押しアドバイスすることで、講師が生徒一人ひとりの状況を把握して、適切な指導が出来ます。

時々体を動かして気分転換

改良を積み重ねて、理解しやすい映像授業を作り上げている。
さらにそれを使う手順まで、他に類を見ないほどマニュアル化されている。
生徒はその映像を受講して学習する。
しかし、太田学院長はそれをワン・ツー・ワンの一部でしかないと言い切る。

太田学院長:
映像授業の内容が優れているから、成績が上がるわけではありません。
映像授業があるから、塾が勉強を教えるのではなくて、勉強方法を教える事が出来る。
その事に価値があるのです。

では、その勉強方法とは何なのか。

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